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 5月の旅人







  「世界仕事めぐり」で新境地を開く

 篠田 香子さん

   ジャーナリスト


インターネットで南極旅行を予約した旅の達人

 インターネットで南極旅行の予約をしたのは、旅先のフロリダにある図書館だった。

 「雑誌に連載している仕事が一区切りついたので、何か面白い体験がしたいと考えていたら最近盛んになり始めた南極旅行が思いついたの。手持ちのMACではWWWが見られないから、町の図書館でインターネットが使えることを知ってかけ込んだら、何にも言われず長い時間、使わせてくれた。あちこちアクセスして南極でクルージングしている最も小さなクルーザ−を見付けて予約。その後、E-MAILで『旅行会社が入らないんだからディスカウントしなさいよ』と掛け合ったら10%割り引いてくれた。我ながらその手軽さに驚いた」。

 同じ手口で米国シリコンバレーにあるNASAが一般向けの構内ツアーを募集していることを知り、PCとは違うもう一つのシリコンバレーの面白さを体験して、久しぶりに帰国、「旅コム」編集部に顔をみせてくれた。

 「WWWのNASAサイトはお勧めよ」。

 といっても、インターネットのベテラン・サーファーでも名うての使い手でもない。WWWで簡単に手に入るものがあったから、そこにアクセスして必要な情報を捜し、予約しただけよとまったくけれんみはない。したり顔でインターネット使いを講釈するわけでもなく「必要な情報を探すのにとても便利な情報機器である」というのが、篠田流インターネット術である。

 南極旅行もNASAツアーも自分が探し出したURLがさっと思い出せない。子供が面白がってホームページを括っている内に、偶然、不思議の国にはまり込んで旅にでたくなった。言ってみれば、そんな風である。

 「第一、白黒のMACを1台もってあちこち飛び回って重宝させていただいているけどパソコンに関してはハードもソフトも自慢ではないが殆どゼロ」と、悪びれるところのないのがいい。「でも、あまり余計なことは必要ないのよね。カリフォルニア州のヨセミテ国立公園に行きたいと思ったら、インターネット上にあるヨセミテ公園のサイトをあれこれ全部めくる必要なんか全然ない。今の時期の来週の現地の情報を手に入れられて、どんな現地ツアーに申し込めばいいのか、それがわかれば十分ですもの」

 思い立ったら電話帳のように手軽に世界中のネットワークにアクセスして情報をゲットする。携帯用端末がなければ旅先の図書館やホテルのビジネスセンターでもいい。そんなインターネット・ユーザーの近未来的な使い方をそのまま実践しているのが、国際ジャーナリストとして本格的な活動をはじめた篠田香子流インターネットの付き合い方である。

 理屈の前に行動がある。言ってはなんだが、並みの男の行動力ではない。

 その昔、モロッコのベドウイン族のテントに全身ダニの餌食になって一晩過ごしたが、今回はアフリカ大陸スワジランドで寄生虫にやられ、40度の高熱を出して危うく一命を落とすところだった。

 自らプロダクションを興し、東京とロンドンを基点に地球を飛び回るが、得意の英語力にものを言わせて、時には有名ブランドのマーケティングの仕事もこなすキャリア・ウーマンでもある。

 どうせあれこれ世界の仕事場を覗く取材依頼が多いのなら、自ら一仕事1カ月現地での代表的な職場や話題の国を取材、それを雑誌に掲載する企画を思いつき、女性誌「FRAU」で1年余りにわたる連載を開始した。

 最初に選んだニューヨークでは世界的に有名なハースト出版社で広告部の秘書役を捜した。

 「猛烈なって言うもんじゃない。全員が女性の職場で互いに凌ぎを削る。同僚にランチはどうするのて聞いたら、ふん、それ何と一蹴されてしまった。生き馬の目を抜くてそういうことなんだなと最初から直球を投げられたわよ」

 以後、ほぼ1〜2カ月で次ぎの仕事を捜し、電話やE-MAILで確認し任地に飛んで行く。その合間に原稿をMACでたたきE-MAILで出版に届ける。

 ・ミラノ:ファッション・ブティックの売り子
 ・モスクワ:貿易会社の秘書
 ・サンノゼ(シリコンバレー):PCソフト会社のマーケティング部
 ・メルボルン:弁護士事務所で死刑囚等を相手に刑法部事務手伝い
 ・プノンペン:孤児院の先生と日刊紙の記者
 ・カトマンズ:赤十字日赤支部でアシスタント
 ・仏コニャック:レストランのコック手伝い
 ・香港:ジョッキークラブ(競馬協会)放送部
 ・スワジランド:動物保護区のレンジャー
 ・カリブ海:クルーズ船のスチュワーデス
 ・アルゼンチン:牧場の手伝い

 詳細は、連載している月刊誌「FRAU」か、近く発刊予定の単行本(講談社)で読んで貰うとして、いずれもキャリア・ウーマンが思わず引き込まれてしまいそうなテーマばかりだ。

 その昔旅行専門誌の入社試験を受けた時、「君は女なのにナタみたいな文章を書くね」と言われたが、今でもどちらかというと骨太の文章を書く。

 「各国の人達と寝食を共にして感じたこと? そうね、みんなそれぞれに自らの仕事に誇りを持っていて、強烈に自分の国を主張すること」

 リストラの嵐の中で仕事への自信を失い、国政からも明快な主張が消えつつある日本とは対称的だということか。

 それにしても、「女ひとり海外へ旅に出すなんて言語道断だ」というのが、年頃の娘を持つ日本人のほんの少し前の一般通念だった。その伝で行けば、「とんでる女」の筆頭である。

 「生き方まで益々骨太になってきた」とは、かつての上司評。

 時代の空気をつかみ動き走りながら直感的に戦略を組み立てて行く。ジャーナリスト特有のそそっかしさも併せ持つから、結構「ドジも重ねている」と笑うが、地球を舞台にした行動力の広さは、正真正銘の男勝りである。

 それでいて女としてのしなやかさもまだまだ健在だから嬉しい。

 世界の表情を独自の視点で伝える「ホームページ篠田」の誕生を期待したい。

(構成:高梨 洋一郎)

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